大人こそ自由研究をしよう

これはGMOペパボ ディレクター Advent Calendar 2020の18日目の記事です。


自由研究が好きだ。

 

自由研究は子どもの特権ではない。むしろ、大人になってからの方が基礎知識や考える力、経済力がついている分、研究できる範囲は広がっている。

 

これは、大人になってから行う自由研究は楽しいよ、みんなやろう、そして研究結果を教えてほしい、あわよくば自分の結果も見てほしい、という趣旨のエントリーである。

自由研究の楽しいところ

やりたいことが無限に存在する中で、あえて自由研究に時間を注ぎ込むのは、一言でいえば(苦しくも)楽しいからである。
何が楽しいかというと、「自分が知りたかったこと」かつ「まだ誰も知らないこと」を自分が動いたことで最初に知ることができるのである。興奮しますね。

テーマの選び方

自由研究をするには、まずテーマを決める必要がある。
テーマは大きなものや人類全般に役立つものでなく、自分が本当に感じたことから発想したものの方がよい。

ある一定期間そのテーマを考え続けることになるので、人の役に立つことよりも自分が本当に知りたいことの方が、モチベーションが維持されやすいからである。

私の場合は、日常の中で感じたことや課題をメモしておいて、しばらく経ってもまだやりたいと思えるものの中から選定している。
テーマのアイデア出し
Trello にどんどん追加していく(後から見るとなんのことかわからないものも多い)

いかにくだらない(しかし自分には重要な)内容をテーマに据えてきたかをイメージしてもらうため、過去に取り組んだテーマとそのきっかけを記載してみる。

    • 精神や体調は、何によって決まるのか(2018)
      前職で毎日ぎりぎりの闘いをしていた中で、切実に「風邪をひきたくない」「少しでも心健やかにいたい」と感じたことがきっかけ。活動量や食事内容、睡眠時間等の様々な値を記録し、それと体調等の関係性を検証した。
    •  なるべく日陰を通るには、どのルートを選ぶべきか(2019)
      2018夏、初めて福岡で迎える夏があまりに暑く「もしやこれから毎年この暑さを乗り切らねばならぬのか」と恐れおののいたことがきっかけ。出発点と到着点を指定した時、どのルートを通るとどの程度日陰になるか計算を行った。(なお、2018夏は特異な年で、翌年以降はそれほど暑くなかった)
    • レシートの家計簿入力を少しでも楽したい(2020)
      スプレッドシートに手入力していたが、「外税か内税か軽減税率適用商品か目で見て判断するのほんとめんどい」「同じ品目名何回も入力するの人生の無駄だな」と思ったのがきっかけ。レシートをOCRした後、結果を調整してCSVに吐き出す仕組みを作った。

自由研究の進め方

取り組むテーマが決まったら、いざ研究に手をつけていく。
ここでは、上記で事例に挙げた「精神や体調は、何によって決まるのか」を例に、私なりの自由研究の進め方を示していく。

 

1.   すでに調査・実現している先達がいないか確認する
「体調に最も影響をもたらすファクターは○○!」みたいな結論を誰かが出しているなら、そのテーマに取り組む意義は薄くなる(「誰かが類似研究をしていても、〜の点を解決したいから or どうしても自分でやってみたいから このテーマを押し進める」という判断をすることもある)。
このテーマの時は、仮に先行研究があったとしても「自分という個体にカスタマイズして知りたい」状態だったため、ざっとCiNiiで検索する程度でよしとした。

 

2.   何がわかればそれを調査・実現できるか検討する
取り組む前から手順が想像できていれば容易いが、どうやって取り組めばよいかわからない状態で始めることも多い。
このテーマの時は「たぶん各種指標と体調の相関を見ればよいのでは」程度の認識だったので、「相関ってどうやって計算するのか」「本当に相関を計算することで検証できるのか」をまず調べることが必要だと判断した。

 

3.   2.で検討した内容を学ぶ
読んだだけだと即忘却し、元のわからなかった状態に戻るので、内容をメモしながら進める
このテーマの時は、統計の勉強をしないと調査を進められないと感じていたので、相関を含め統計の基本を勉強した。具体的には、統計の入門から書かれている本を10冊程度並行して読んでいった(1冊を集中して読む方法もあると思うが、複数読むことで何度も出てくるところは重要だとわかるし、1冊で理解できなかった箇所を他の本の説明で理解できるメリットがある)。

 

4.   テーマの調査・実現を試みる
たとえ実質進捗がなくても、やったことを記載して自分を励ますことが肝要である
3.で理解した内容をもとに、テーマの解決を実際に試みてみる。これで結論までいけそうならそのまま進めるが、実際は「やってみたらここが不明だからこれ以上進められない」とどこかでつまづくことが多い。そうしたら、またその不明な点がわかるように勉強、新たに得た知識を元にまた進める、を繰り返していく。
このテーマの時は、「時系列データの時は見せかけの回帰というのが発生するらしい」と知ったので、そのあたりを学べる本を探して読んだ(難しくて理解できず、かなり苦しかった記憶がある)

 

5.   ある程度区切りがよいところまで進んだらまとめる
自分の中でいったんここまで、というところまで来れたら、アウトプットする。仕事でなく遊びなので、「飽きた」「明確な結論が得られなかった」状態でもやめてよいことにしている(ただ、それであっても何らかの形でアウトプットを行う)。
子どもの自由研究は見てくれる人(教師なりクラスメイトなり)が労せず得られるが、大人になると「見てもらう」こと自体も難しい。まずは「理解してもらえる形で目に触れる場所にある」ことが最低条件となる。
一人で進めていると内容が誤っている可能性もあるのが怖いところだが、機会があれば勉強会等で発表すると助言が得られることもある。

自由研究のメリットデメリット

「楽しい」というだけでやるに値するが、一応メリットデメリットを整理する。

メリット:心の安定に寄与する
自分が動くことで、今までなかったものが生み出される。たとえ、仕事で価値をあまり生み出せていない時期も、自由研究で成果が出れば、自分の中で多少心の支えになる(業務面の課題は何も解決していないのだが、別方面で成果を得ると脳が錯覚するのである)。
また、業務後に仕事とは異なる内容に頭を使わないといけなくなり、業務のあれこれを考える余裕がなくなるので、結果的に気持ちの切り替えもしやすい。
※ なお、自由研究でも進捗が出なくて二重に苦しくなることもままある

デメリット:可処分時間の減少
自由研究に取り組むと、思った以上に時間を食うことに気づく。しかし、可処分時間の大半を注がないとなかなか進捗が出ないので、楽しくならないというジレンマがある。遊ぶ時間や他の勉強をする時間に影響するので地味につらい。

結論

大人になってから行う自由研究は(苦しくも)楽しいぞ、みんなやろう

 

よい自由研究ライフを!